黒澤明vs.ハリウッド / 田草川 弘

目次:
第1章 桁外れの男たち
第2章 天の召命
第3章 クロサワ・マジック
第4章 シシュフォスの苦行
第5章 クロサワのこだわり
第6章 “ドキュメント”破滅への秒読み
第7章 “検証その一”思いこみの謎
第8章 “検証その二”診断書の謎
第9章 “検証その三”契約書の謎

紹介:
澤明監督による日米共同製作映画『トラ・トラ・トラ!』。1968年12月、撮影
開始直後、なぜクロサワは解任されたのか。この日本映画界最大の謎に迫った、
ノンフィクションの金字塔。本書は、大宅壮一ノンフィクション賞講談社
ンフィクション賞、大佛次郎賞芸術選奨文部科学大臣賞の史上初4冠受賞作。

これはおもしろいぞ。映画『トラ・トラ・トラ!』黒澤解任までのドラマ。ノンフィクション。

アメリカで発見された、黒澤による準備稿。
黒澤と20世紀Foxとの脚本, 演出方針に関するやりとり。最高のものをつくろう、という両者。この段階で、脚本の翻訳を行ったのがまさに著者だったらしい。
ついに決定稿ができ、撮影開始、助監督らがつけていた撮影日記から、混乱している現場の様子が読み取れる、解任へのカウントダウン。なんとか立てなおそうとする、Fox社のプロデューサー、(副)社長ら。でも、ついに解任に。。

「検証」はちょっと論旨が甘い感じはするが。なぜ解任することになったかって、もう、本書に書かれているじゃん。黒澤の撮影方針と、ハリウッド、京都の撮影方針が違ったってだけでしょう。
診断書なんて、後付け、だから、Foxは保険金もらえないし、黒澤が自分で言ってるように、病気でもなんでもない。撮影が10日遅れなんて、黒澤はざらだったんじゃない。そんな黒澤の撮影スタンスを知らずにか知っててか、契約書には、10日遅れたら、Fox側が一方的に解任できる、って書いてあったんだって。こりゃだめだわ。
どっちが悪いってことはないよね、コミュニケーション不足だね。Foxというかハリウッドからすると、映画は産業, 商売であって、スケジュール通りにすすめるのはあたりまえ。でも、黒澤にとって、映画撮影は、そうじゃない(たぶん)。そこを掛け違えたまま、走り始めてしまったから、もう、解任は必然。

この映画用に書かれた黒澤の絵コンテがいくつか掲載されている。黒澤は画家を目指していたこともあるらしい、へぇー。