ナイロン100℃「百年の秘密」@本多劇場

舞台をみる。

百年の秘密
百年の秘密

おもしろい。
休憩はさんで3時間半の長丁場。ナイロン100℃の舞台はいつも長いが今回も。
が、長さを感じさせない見事な構成。100年に渡るベイカー家の盛衰が語られるのだが、時系列に進めるのではなく、主人公犬山イヌコ演じるティルダ12歳のある日(具体的に演じられるのはとある一日だけ)、次は26年後の48歳、次はさらに40年後で、なんとティルダは死んでしまっていて、残された子供たちが一家を見守ってきた楡の木のある家を手放すしかない、という悲しい状態になっていて。おいおい、こんなに早く主人公死んでどうすんだよ、と思ったら、また時間がさかのぼって ティルダ 20代、30代の頃の話が語られ。後の時代でこうなってたのは、前にこんなことがあったからか、という伏線のはりかたとたたみ方、時代の配置が見事。
全般的に明るい作品ではなく、なにかちょっとした違和感を感じながら、家族をやってる感じ。場面場面で誰かしらなにかしらの秘密がほのめかされ。
もう一人の主人公、ティルダの友達コナを峯村さん、
バスケットボールの選手だったけど、やめてしまった兄エースを大倉さん、
コナの夫、エースの友人を萩原聖人さん、
ティルダの夫を山西惇さん、
など、安定した演技の面々が、演じ。
文芸小説によくあるような、一つの家族を長い時間でとらえ続け。「よく」といって、具体的にこれに似た作品の題名はでてこないんだけど、なんかね。

舞台は、ベイカー家の居間、庭。
はじまりやポイントポイントでそこに映像を重ねる演出をしているのだが、で、これはナイロンでは昔から何度もやってきていることなんだが、これって最近はやりの「プロジェクション・マッピング」だよねぇ、と気づいた。演劇の世界では随分前から取り入れられてる手法。

チラシより。

二人の女性の半生を描くつもりだ。

彼女と彼女は青春時代に出会い、友人関係を築く。とは言え、ずっと一緒にい
るわけではなく、人生の局面で幾度か再会し、やがて別々に死ぬ。そんな話。
これが男性同士であれば、いわゆる「友情物語」になるのかもしれない。そう
なるのを慎重に避けるべく、女性の物語にしたとも言える。「女性同士に真の
友情なぞ成立し得ない」などというつもりは毛頭ないが、そして私は男性であ
るから本当のところは判らないが、やはりどうもしっくりこないのは、「生涯
に渡り続く友情」はもはやロマンの領域だからだ。女性の場合、概ね「生活」
が「ロマン」を凌駕するのではないか。「友情」などという言葉ではとても語
り尽くせぬ、複雑でデリケートな関係を描ければと思う。そんなドラマでこそ、
二人の間の秘密、二人をとりまく秘密は深淵さを帯びるだろう。

昨年(2011年)のナイロン100℃は、映画の為に書かれた台本を脚色したモノと
再演だったから、劇団への純書き下ろしとしては、一昨年の「2番目、或いは
3番目」以来となる。今回はシリアス度もシニカル度も高め。覚悟して頂きた
い。全力を尽くす。

「別々に死ぬ」は微妙に違ったけど。
見た後心地良い疲れにおそわれた。