『祈りと怪物〜ウィルヴィルの三姉妹〜』@コクーン

舞台をみる。
祈りと怪物
http://news.livedoor.com/article/detail/7219870/
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/12_inorikera/

「祈りと怪物〜ウィルヴィルの三姉妹〜」メモ

いつの時代も、世界中の至るところで「祈り」が捧げられている。
その前には、あたかも試練であるかのように、何か大きな力が立ち塞がる――。

「もしも、ガルシア・マルケスが『カラマーゾフの兄弟』のような物語を、姉妹に置き換えて書いたら?」というのが、発想のきっかけだった。
まあ、どうせ出来上がる台本はてんで違うモノになるに決まっているのだけれど。

ブラック・ファンタジーだ、マジック・リアリズムだ、と色々な言葉で説明をしてきたが、平たく言えば、大人のお伽噺である。
お伽噺だから、あたりまえに不可思議な出来事が起こる。そこに科学的根拠はなにもない。とは言え、描こうとしているのは、ディズニーランドのような幸福観とはおよそ無縁の世界なので御用心を。我々の現実と、きっとどこかで地続きの世界である。彼ら登場人物が祈らねばおられぬ気持ちで流す涙は、きっと我々と変わらぬ、ときに暖かく、ときに苦い涙だ。

とある架空の町に暮らす三姉妹。市長である彼女達の父親。そこに様々な人々が絡むに絡む、そんなお話。 鉱物と話をする青年と彼の友人、空の鳥かごを手にした放浪の若者。
市長の百歳を超える母親と何十番目かの後妻、幼いわが子を失った使用人夫婦、曰くありげな執事長と若いメイド。錬金術を見世物に世界中を旅しているという紳士と白痴の助手、よからぬ企てを胸に日夜集う市民達、そして神の不在を確信した司祭――。
波瀾万丈、奇妙奇天烈な群像劇になるはずだ。拙作には珍しく、体温の高い芝居になるやも知れぬ。

観る人の数だけ答があるような舞台にしたい。背後に蠢く思惑や、直接語られることない事態の推移を、各自の脳内に立ち上げながら御覧頂ければ幸いである。

できるなら、続けて上演される蜷川バージョンと両方ご覧になり、比較して楽しんでもらいたい。演出家の自分が「負けるものか」と力む一方で、劇作家としての自分は「演出家が変わるぐらいで揺らぐような、芯の細いものを書いたら失格だ」と肝に命じている次第。

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(作・演出)

ケラの舞台は『百年の秘密』以来。
10分x2の休憩を挟んで4時間10分の長丁場。
たくさんの登場人物、エピソードがからみ合って、一つの町、支配する一家、が破滅に向かっていくような感じ、世界観に「どっぷり浸る」にはこれでも短いくらいなのかもしれない。
とはいえ、もう少しエピソードをしぼってもいいような。例えば、夏帆三上市朗さんがからむエピソード必要だったか?生の夏帆は超かわいかったけど。

舞台は架空の町・ウィルヴィル。町を支配する、ドン・ガラス・エイモスに生瀬さん。娘たち、長女に久世星佳、次女に緒川たまき、三女に安倍なつみ安倍なつみ、思ったほど悪くないね。

乗組員が全員殺された船 その船にのり、ウィルヴィルにたどり着いた流れ者ヤン(丸山智己)。おばあさんを助け、ドンの家に入り込み。助けた、といっても突き落としたのも自分だけど。この男と次女ができて。

びっこのトビーアス(小出恵介)、パブロ(近藤公園)、はじめは盗掘、強盗?をしていたのが、ドンを手伝うようになり。トビーアスと三女ができて。

牧師(西岡徳馬)と長女もできてて。

不思議な力をもつパキオテ(大倉孝二)と錬金術師(山西惇)が、牧師と一緒に村の人達をたぶらかし。パキオテの力が宿った薬(といってもただの小麦粉だかなんだか)で、すこしみんながハッピーに、でも、パキオテの力がなくなり、薬により発狂する人まででてきて。一応これが、一番大きな破滅への原因、と思われ。

子供を亡くしたメイド メメ(犬山犬子)とマギーの夫妻。パキオテに子供を見えるようにしてもらったり。

峯村さんは、ドンの妻役で、
木野花さんは、ヤンに助けられ、いれこむ、ドンの母(と、トビーアスの母の二役)、
池田成志さんは、ドンにたてついて、一旦トビーアスに逃せしてもらったけど、その後戻ってきて殺されて。

牧師はくるって、長女を殺そうとして、逆に殺されて、
ヤンは耳とか目とか年寄りの心臓とか、自分を捨てた父を呪うため、人を殺していろんなものを集め、ドンの母を殺し、心臓を取り出すことでついに集まり、ヤンの父が実はドンであることがわかり、次女がヤンを撃ち、

トビーアスは母のため、ドンの家で盗みを働き殺され、

そんな感じでみんな死んでいき、

いろいろあるんだけど、中心となるエピソードがなく、どれも、それなりに、でも、全体としては、カタストロフィに向かい。残るのは 一家だけなのね。
3人の姉妹は、さらに最後火山の灰に飲み込まれることになってるけど。

全編に流れるパスカルズの音楽、生演奏。「世界観」にあってて◯。

蜷川バージョンもあるけど、まぁ、蜷川は苦手だからパス。

今年はこれで舞台見納め。
十数本と少なめだったけど、今年の一番はなんだろう。初挑戦のオペラは素晴らしかった。ストレートプレイでは、ナイロンの『百年の秘密』かな。