ナイロン100℃「わが闇」@本多劇場

舞台をみる。
わが闇

「わが闇」は間違いなくナイロン100℃の転機となった作品だ。
07年末の初演時、当日パンフに付した挨拶文に、私は次のような内容のことを記した。
「自分は早世の家系であるから、これからは、もはや晩年なのだと心して、悔い無きよう、一作一作を、より大切に創っていきたい。本作は『晩年第一作』となる」。
文章は「できるだけ長い晩年になることを祈りたいが…」的な結びで終えたように記憶する。

 様々なタイプの舞台を創るのが我々の信条である故、今もそうしてきているが、「晩年第一作」以降、明らかに意識が変わった。それまでなんとなく照れて書かなかったような、自分の幼い頃、若い頃の実話や思いを、語っておくべきだと感じたし、人間の冷たさ、残酷さ、不条理と共に、やさしさや誠実さも描いていこうと決心した。 それらが等価に散在しているのが世の中なのだから。

 なにしろ第一作だから、「わが闇」には、そうした思いが一際強く表明されている。沢山のお客さんに支持してもらえた所以であろう。どこにでもある「家族」の物語だ。

ナイロン100℃20周年記念興行の締めくくりとして、「わが闇」をオリジナルキャストで上演できることがとても嬉しい。はてさて、初演とどう変わるのか、変わらないのか。御期待頂きたい。

 そして晩年はつづく…。

主宰 ケラリーノ・サンドロヴィッチ

2007年12月に、31th Sessionとして、やはり本多劇場で行われた舞台の再演。出演者は初演時と全く同じ。
いつものようにナイロン長い。3時間半。3姉妹の一家の話。
母の自殺までがプロローグで、その後、話はいっきに30年後にとぶ。
父が死にそうで、姉もまだ小説を書いていて、父を撮影している岡田義徳大倉孝二が、なんというか、かき回し役で。父がなくなったあと、父の再婚相手が登場したり、一番下の妹は、真ん中の娘(峯村さん)のだんなに襲われたり、峯村さんの旦那はやなやつで離婚しようとしてたり、映画がぽしゃりそうになったり、姉の担当編集者の妹が登場したり、姉が失明しそうだったり、いろんな事件てんこもり。それでも、この人達の生活は続く、と岡田くんがしめて幕。
今回の舞台が再演、ということは知っていたが、2007年の初演も見ていたことに、芝居がはじまってから気づいた、というお粗末さ。初めの方はともかく、後半の話は、驚くほど覚えていなかった。
去年みた「百年の秘密」も、長い時間家族をとらえた話だったな、と思い起こされ。